■「日本一厳しい」亜細亜大学 多くのチームメートが…
私が所属した大阪桐蔭高校と亜細亜大学の野球部は、練習や寮生活が大変な印象を持たれている学校です。特に亜細亜大学は「日本一厳しい野球部」と言われていることもあり、引退後は「野球を辞めようと考えたことはなかったんですか?」と質問されます。
亜細亜大学では、練習時間の長さに驚かされました。練習の厳しさも想像以上でした。ノック中は守備についていない選手も中腰をキープし、大きな声を出し続けます。練習中に集中力を欠くミスがあれば、連帯責任でランニングなどが課されます。
入学当初は、この練習が4年生まで続くことを想像して「辞めるなら早い方が良い」と考えた時もありました。ただ、具体的な行動を起こしたことはありません。
チームメートの中には、親に「もう辞めたい」と電話で相談している人がたくさんいました。大半は説得されて、思いとどまっていました。親から「そんなにきつかったら、いつでも帰ってくればいい」と言われると、それが逃げ道となり、かえって「もう少し頑張ってみよう」と前を向けるのかもしれません。
振り返るとつらかった記憶ばかりですが、野球を辞めなくて良かったと実感しています。苦しい時期を一緒に乗り越えた仲間とは思い出話に花が咲きます。また、どのような捉え方や考え方をすれば、つらさの中にポジティブな要素を見いだせるのかを学び、自分の心をコントロールできるようになりました。他の大学との交友関係も広がり、大学の4年間は濃い時間を過ごせたと感じています。

亜細亜大学時代の水本
■「休日は遊びたい」 中学生の時に練習“ボイコット”
私は社会人まで野球を続けましたが、野球が嫌になって距離を置いた時期が一度だけあります。それは、中学生の時です。中学では、父親が監督を務める硬式のクラブチームに所属していました。
土日祝日は、朝から夕方まで丸一日練習でした。中学校の友達は、休日に遊びに出かけていました。一番楽しいはずの時期に自分は野球漬けの生活を送っていることに嫌気がさしました。ある週末、私を起こしに来た父親に対し「練習に行かない」と突っぱねました。父親は「どういうことだ」と何度も声をかけて練習に連れて行こうとしましたが、私は拒否しました。
その後も練習日の朝になると、ベッドから出ずに休む意思を伝えました。すると、父親は一度起こしに来るだけで、それ以上な何も言わなくなりました。私は野球の練習をさぼり、友達と遊び回りました。
最初は自由になれたうれしさがありました。しかし、遊ぶのが楽しいと感じたのは、わずか数週間でした。野球がない生活は、思ったよりも退屈でした。チームのコーチに説得されたこともあり、私は再び練習に戻ることにしました。
■野球のない生活に物足りなさ 社会人野球引退後も実感
似たような感覚は、社会人野球を引退した時にも経験しました。現役時代は週末も練習や遠征が入っていて、土日の連休に憧れていました。ところが、引退して土日が休みになると、意外とやることがありません。時間を持て余してしまいました。
今野球をしている中学生、高校生、大学生の中には、「練習がきつくて辞めたい」、「土日に遊びたい」と野球から離れたいと感じている選手がいると思います。もちろん、体や心の限界を超えてまで続ける必要はありません。ただ、困難に直面した時、すぐに辞めるクセをつけないようにしてほしいです。
つらいことがある度に諦めてしまうと、野球に限らず、目標を実現するのが難しくなります。少し時間を置いたり、周囲に相談したりしながら、本当に辞めたいのかを考えることも重要です。
土日に遊びたいと思っている小・中学生には、私のように一度目いっぱい遊ばせてみるのも1つの方法です。野球のない生活を経験させ、「自分が求めていたものと違う」と感じたら戻って来られる環境を大人が整えることが大事だと思います。子どもたちは自分の思い通りに行動してみることで、初めて気付くことがあります。外から言葉で説得されるよりも、実際に自分自身で体験する方が納得できる場合もあります。

現在は石川、愛知、岐阜で野球塾を運営
■一度離れるのも選択肢 練習の強制は子どもに逆効果
無理やり練習に連れていっても、子どものためになりません。自分で選択させ、その選択に責任を持たせる。大人にやらされている状態では、「本当はやりたくないけれど、仕方なく続けている」という気持ちが残ります。一方、自分で続けると決めれば、練習への向き合い方も変わります。
一度野球から離れたからといって、それで全てが終わるわけではありません。私も野球のない生活を経験したことで、競技の存在の大きさに気付き、自分の意思で戻ることができました。
続けるのか、離れるのか。どちらを選ぶにしても、子ども自身が考えて決断することが大切です。大人に求められるのは、子どもが自分で選び、再び挑戦したいと思った時に背中を押す役割だと思います。