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ドラマは減る? 暑さ対策に有効? 高校野球7イニング制の賛否

■議論進む7イニング制 約7割の高校が反対

高校野球の試合を現在の9イニングから7イニングに短縮する議論が続いています。監督経験者や医師をはじめ、長年にわたって野球に関わってきた人たちが参加する意見交換の場も設けられています。

7イニング制が検討されている背景には、年々厳しくなる暑さへの対応や、野球部員の減少があります。一方、日本高校野球連盟が加盟校を対象に実施したアンケートでは、約7割の高校が導入に反対しているそうです。

特に部員数の多い高校ほど反対する割合が高く、その理由には「選手が試合に出る機会が減ること」が多く挙げられています。試合終盤の劇的な展開が少なくなり、野球本来のおもしろさが薄れるのではないかという声もあります。

私の母校・大阪桐蔭高校の西谷浩一監督も、7イニング制に強く反対している一人です。報道によれば、「最も暑い時間帯でも、3イニングごとに休憩を入れれば熱中症の予防につながる」、「7イニングになることで先発投手の球数が減り、同じ投手を連投させるチームが出てくる可能性がある。ようやく定着してきた投手のけが予防や複数投手制に逆行する」といった趣旨の指摘をしています。


年々暑さが厳しくなる夏の高校野球

 

■甲子園は快適 暑さが厳しいのは試合より練習

私自身は、7イニング制を導入する理由に疑問を持っています。最大の目的とされている熱中症対策について、イニングを2つ減らすことで大きな効果が得られるとは考えにくいからです。

野球では、攻撃中にグラウンドへ出ているのは打者と走者だけです。それ以外の選手は屋根のあるベンチで待機し、こまめに水分を補給できます。現在は5回終了後にクーリングタイムも設けられています。

特に甲子園のベンチは涼しく、過ごしやすい環境です。私が甲子園でプレーした14年前と比べて、現在の方が暑さは厳しくなっていますが、当時、試合中に暑さを強く感じた記憶はありません。

高校野球を経験した人には共感を得られると思いますが、暑さという点では試合よりも日々の練習の方が圧倒的に厳しいです。本気で熱中症を防ごうとするのであれば、試合のイニング数を減らすより、練習方法を見直す方が効果は大きいと感じます。全試合を一律に7イニングにするのではなく、例えば地方大会の3回戦までは7イニングで実施するなど、一部の試合に限って導入する方法も考えられます。

 

■選出の出場機会増やす動きと逆行 大学やプロとの違いも課題

甲子園を目指す高校は、暑い中でも一定量の練習を積んでいます。その一方で、進学校や部員数の少ない高校の中には、練習時間が比較的短いチームもあるかもしれません。普段から日なたで練習する時間が短い選手にとっては、試合中の暑さが大きな負担になる可能性があります。

暑さ対策とは別に、7イニング制が選手の出場機会を増やす流れと逆行する点も気になります。甲子園では今春のセンバツからDH(指名打者)制が導入されました。ベンチ入りできる選手が近年2人増えたことも含め、より多くの選手が試合に関われる仕組みづくりが進んでいます。しかし、試合が7イニングになれば、実際にプレーできる選手は減ると予想されます。

さらに、高校野球だけが7イニングになった場合、選手が大学や社会人、プロへ進んだ時に、集中力や体力の面で課題が生じる可能性もあります。ただし、私は7イニング制そのものに反対しているわけではありません。イニング数を減らすことで高校野球が抱える課題を解消できるのであれば、検討する価値は十分にあると思っています。

また、「7イニングになると試合のドラマが減る」という意見についても、必ずしもそうとは限らないと考えています。確かに、野球は8回や9回に試合が大きく動き、劇的な展開になる印象があります。


終盤のドラマが高校野球の醍醐味の1つ

 

■終盤のドラマは減らない? 7イニングで新たな可能性も

私も高校時代、終盤に逆転した試合を数多く経験しました。2012年のセンバツでは、9回に試合をひっくり返した準々決勝の浦和学院戦をはじめ、終盤に流れが大きく変わる試合がほとんどでした。序盤にリードされても、西谷監督は「後半、後半」、「我慢していれば、後半に必ずチャンスがめぐってくる」と繰り返していました。

序盤から平凡な内野ゴロでも全力で一塁まで走れば、相手の内野手に「少しでもミスをすれば出塁を許してしまう」というプレッシャーを与えられます。その積み重ねが相手の意識に残り、終盤の焦りにつながります。こうしたドラマは、9イニングだから生まれるというより、試合の終盤に高まる緊張感や、選手の集中力が研ぎ澄まされることで起きるのだと思います。

7イニング制になれば、6回や7回が現在の8回、9回と同じ意味を持つようになります。劇的な展開が起きるタイミングが早まるだけで、7イニングならではの戦術やおもしろさが生まれる可能性もあります。

野球は9回で行うものだという形が長く続いてきました。そのため、イニング数を減らすことへの抵抗感が生まれるのは自然です。それでも、長年の常識や当たり前を一度見直し、より良い方法がないか考えることには意味があります。そうした議論が、高校野球の新しい魅力を見つけるきっかけになると考えています。