■甲子園春夏連覇を達成後 日本代表の合宿に合流
先月のコラムでは、私が独断で選んだ「同級生ベストナイン」をお届けしました。そのベストナインの中には、高校日本代表でチームメートだった選手もいます。今回のコラムでは、高校3年時に選出された日本代表をテーマに綴ります。
2012年の夏、甲子園で春夏連覇を成し遂げた数日後に、私はU-18(18歳以下)日本代表の合宿に合流しました。このチームは、韓国で開催された「第25回AAA世界野球選手権大会」に参加するために結成されました。
日本代表入りは、高校時代に掲げた目標の1つでした。同世代の最強メンバーと一緒にプレーしたいと思っていました。
代表のメンバー選考は、途中経過が伝わってきます。まずは、候補に入っている段階でパスポートを申請するように、所属する高校の監督から伝えられます。国際大会なので、代表入りが正式に決まってからパスポートの手続きを始めても間に合わない可能性があるためです。

写真はイメージ
■「水本くんともう1人の選手で…」 “大逆転”でメンバー入り
そして、選考が進むにつれて、色々な情報も耳に入ってきます。甲子園の大会期間中に報道陣の囲み取材を受けていた時、私は記者の方に、こう告げられました。
「外野手は最後の1人で、水本くんともう1人の選手のどちらを選ぶのか首脳陣は悩んでいるみたいだよ」
その取材を受けている最中、最後の1枠を争うライバルが本塁打を放ちました。その情報を聞いて、私は「やられた」とあきらめかけました。しかし、私は直後の試合で4打数4安打の大当たり。後に聞いた話では、この試合の活躍が代表入りの決め手になったそうです。
日本代表では、キャプテンを任されました。代表チームには、私よりもリーダーシップのある選手がたくさんいました。ムードメーカーは、光星学院の田村龍弘選手(現:ロッテ)でした。それでも、私が任されたのは、夏の甲子園で優勝した日本一のチームでキャプテンをしていたからだと思っています。キャプテンだからといって特別なことをするより、能力の高い選手が集まるチームの中で、全体のバランスを取ることを意識していました。
■小倉全由監督が指揮 選手の特徴生かしたチームづくり
当時の代表チームは、日大三高の小倉全由監督が指揮しました。小倉監督からチーム方針を説明された記憶はなく、「能力の高い選手を選んでいるから、その力を発揮できるように準備してほしい」と言われたくらいです。監督が目指す野球をチームに浸透させるよりも、監督自身が個々の選手の良さを消さないようにしていた印象を受けました。
代表チームは、短期間でチームをつくり上げる必要があります。練習の時間や場所も限られるため、高校での練習とは異なります。個々の技術練習やカットプレーなどの連携に時間を使います。トレーニングの時間がなかったのが、普段とは大きな違いでした。
練習時間が短く、トレーニングの時間もなかったため、疲労が抜けすぎて体がフワッとする感覚がありました。施設を確保するのは難しい事情があるかもしれませんが、試合の数日前まではトレーニングする時間があった方がよかったと今になって感じます。

高校3年生の時に甲子園で春夏連覇を達成
■エンドランで知った 大阪桐蔭と他校の違い
代表チームは各学校から選手が集まってくるので、他の高校との違いを知る機会にもなりました。例えば、エンドランの捉え方は大阪桐蔭と他校では違いがありました。
大阪桐蔭では、エンドランのサインはアウトカウントによって、打者に求める内容が変わります。一塁に走者がいる場合、無死であれば、打者は空振りだけは絶対にしない打撃を意識します。走者を二塁に進めることが課せられた任務なので、ボテボテの内野ゴロでも構いません。
それに対し、1死の場面は一、三塁をつくりたいので、攻めのエンドランになります。併殺打を避けるためにセンターラインに打球を飛ばさないようにして、チャンスを拡大する打撃を心がけます。
2死一塁のケースでは、一塁走者を還すことが目的なので、長打にできる投球に狙いを定めます。ボール球はスイングせずに見逃しても構いません。同じサインでも、アウトカウントによって考え方を変える打撃は、意外と甲子園常連校でも少なかったです。

大阪桐蔭高校時代の水本
■大谷翔平選手から意外な話 「寮に霊がいる」
グラウンド外でも、監督やコーチからは厳しいルールを設けられず、比較的自由でした。宿舎では他の部屋に遊びに行って、しゃべっていましたね。野球の話題が大半で、他校の練習内容や寮生活、他のチームメートについて話していました。
私は大阪桐蔭が日本で一番厳しい高校と自負していましたが、話を聞いていると、より大変そうな高校もありました。驚いたのは、練習試合の点差や失点数によってランニングの本数などのペナルティが変わる高校があったことです。大阪桐蔭では、そういったことがなく、試合後は試合で見えた課題を修正する練習に時間を割きました。各学校の寮生活が話題になった時、大谷翔平選手(現:ドジャース)から聞いた「花巻東の寮に霊がいる」という話は印象に残っています。
「AAA世界野球選手権大会」では、日本は12チーム中6位に終わりました。優勝できる自信を持って臨んだだけに落胆しました。実力以外の部分で国際大会の難しさを痛感したところもありました。そして何よりも、選手間が本音で話せるようになり、チームに一体感が生まれてきたタイミングで解散する寂しさが大きかったです。
高校日本代表でともに日の丸を背負ったチームメートは今、プロ野球や社会人野球で頑張っています。短期間でも一緒にプレーした仲間の活躍は、現役を退いてネクストキャリアを歩む私の活力になっています。