■大人は猛暑を懸念 球児の考えに隔たり
2024年も残りわずかとなりました。今年1年を振り返る中で、印象に残っている出来事の1つが甲子園球場で観戦した高校野球です。大阪桐蔭高校で最後の夏に日本一になって以来、甲子園球場に行きました。
今夏に甲子園を訪れた目的は母校の応援です。実は、聖地のスタンドで試合を見るのは3回目でした。中学生の時に1回、大阪桐蔭時代に次の対戦相手の研究で1回、それから今夏です。
スタンド観戦とグラウンドでのプレーで甲子園の感じ方が全く違うことは、以前のコラムでお伝えしました。今回のコラムは、高校野球界を超えて議論になった「真夏の甲子園で大会を開催する是非」をテーマにします。
結論から申し上げると、私は今の開催方法を変える必要はないと思っています。5年前、10年前と比べて夏の暑さが厳しくなり、熱中症のリスクが高まっているのは間違いありません。球児の体調を考慮して、「大会の開催時期を変える」、「会場を甲子園からドーム球場に変更する」といった意見が出ることに理解はできます。
しかし、周りの大人が懸念するほど、球児は暑さを苦にしていないと感じています。まず、野球は試合時間が他の競技よりも長いですが、選手はグラウンドにずっと立っているわけではありません。攻撃中は打者、走者、コーチャー以外はベンチにいるので、試合の半分近くは屋根の付いたベンチで自由に水分を取れます。
■球児より暑いのは観客 甲子園より過酷な地方大会
甲子園のベンチ内にはジェットクーラーがついているので、すごく涼しいです。もちろん、試合中には汗をかきますが、甲子園でプレーしていて暑さが気になったことはありませんでした。私が高校生の時はクーリングタイムがなかったものの、ベンチに冷たいタオルが用意されていて試合中に頭や首を冷やしていました。
それから、今夏に甲子園のスタンドで観戦して感じましたが、選手よりも観客の方が圧倒的に暑いです。個人的には人生で一番の暑さでした。日陰のない席で1試合通して観戦するのは、選手の何倍も暑いです。夏の甲子園が危険と指摘する人の中には、球児の意見よりも観客としての自身の経験をもとに話しているのかもしれません。
シンプルに暑さの程度という点で見ると、ベンチの中が涼しい甲子園よりも地方大会の方が過酷です。さらに、大阪桐蔭の選手にとっては普段の練習の方がきついです。おそらく、甲子園に出場する多くの高校は試合よりも練習の方が暑さと戦っている意識が強いと思います。
夏の暑さは年々厳しくなっていると感じます。だからと言って、甲子園の開催時期や会場を変更するのは違和感があります。周りにいる高校野球経験者も、ドーム球場への変更や真夏を避けた開催に賛成している人はいません。
■「なぜ高校野球だけ問題視?」 球児の意見に納得
今夏の甲子園に関する記事で、球児のコメントに「真夏に外で試合をしているのは野球だけではない。なぜ、高校野球ばかりが問題視されるのか」といった趣旨の内容がありました。確かに、サッカーやラグビー、マラソンなどの競技も屋外で大会が開かれますし、屋内競技の中には風の影響を考えて十分に窓を開けて試合ができないケースもあります。高校野球の危険性ばかりが議論になることに疑問を抱くのは自然です。少なくとも、関係者は選手が納得する説明をしたり、選手の意見をしっかりと聞いたりする必要があります。
私は社会人まで野球を続けました。高校や大学の時は日の丸を背負ってプレーした経験もあります。お客さんがたくさん入る中で試合をしてきましたが、ぎっしりと埋まったスタンドから一つひとつのプレーに大歓声が沸く夏の甲子園は特別です。盛り上がり方が他の大会とは全く違います。
仮に来夏から会場がドームに変更され、20年、30年と大会を重ねていけばドーム球場も“聖地”と呼ばれるようになるのかもしれません。ただ、個人的には甲子園球場以外が聖地となるイメージが沸きません。
甲子園をめぐっては猛暑対策の他にも、7イニング制の導入や球数制限、勝ち上がるごとに大きくなる出場校の費用負担など様々な議論があります。2024年に甲子園球場誕生から100年を迎え、時代に合った形への変化が求められる時期に来ているのかもしれません。聖地に憧れ続けた元高校球児としては、大人の事情ではなく、今の選手たちの意向が尊重されることを強く願っています。