■昨年末に石川県で開催 「GO!能登 応援プロジェクト」
起業してから、地元・石川県を訪れる機会が増えました。2月は小松市で野球教室を開催したり、私が小学生の頃に所属していた学童野球チームで指導したりする場をいただきました。
昨年末には中能登町で、「GO!能登 応援プロジェクト」と銘打った野球イベントを開催しました。地震から1年経った今も復興の最中にある石川県を野球で元気づける目的です。チームに所属する地元の小学生80人以上が集まり、ロッテ・角中勝也外野手と岩下大輝投手、楽天・島内宏明外野手とヤクルト・北村拓己内野手、石川県出身のプロ野球選手4人に参加していただきました。
このイベントは能登半島地震発生の1週間後、ヤクルト・北村選手から私が連絡を受けたことがきっかけでした。北村選手は亜細亜大学野球部の1年後輩で、大学卒業後も親交があります。「次のオフシーズン(2024年のシーズンオフ)に能登復興のイベントを開催したいのですが、力を貸してもらえませんか?」と相談されました。
私自身も復興のサポートをしたいと考えていたので、快諾しました。子どもたちに夢やパワーを与えられるプロ野球選手が参加してくれるとあれば、断る理由はありません。後日聞いた話では、北村選手だけではなく、他の選手たちも考えは同じだったそうです。
■星稜野球部OBの力を実感 野々市市の企業も協力
イベント開催に向けて、様々な方々にご協力いただきました。会場でお借りした室内スポーツセンターは中能登町が所有している施設で、年末年始は通常閉まっています。町長や職員の方々にイベントの主旨を理解していただき、利用させていただきました。
イベント会場に中能登町を選んだのは理由がありました。中能登町は被災したものの、より大きな被害を受けた他の地域ほど報道されていませんでした。そのため、他の被災地と比べて、野球をはじめとするスポーツ関連の復興イベントが開催されていない事情がありました。地震によって、子どもたちの学校生活や野球の活動に影響が出ていたことを知り、中能登町での実施を決めました。
今回のイベントで特に実感したのは、星稜高校野球部の連携と行動力です。中能登町の職員さん、協賛企業の経営者の方、ボランティアの皆さんら、星稜OBの方々に支えていただきました。私たちの会社としては、イベントの協賛企業を集めたり、他の方からご紹介いただいた協賛企業にご挨拶へ伺ったりしました。
イベントを開催したのは中能登町でしたが、私が生まれ育った野々市市の企業にもスポンサーとして入っていただきました。昨年9月に野々市市で行った講演がご縁となり、協賛をお願いしたところ快く引き受けていただきました。これまでも企業として幅広く社会貢献活動を続ける中、「自分たちは本当に力になれているのか」と疑問を抱くことがあったそうです。今回の復興野球イベントは子どもたちの喜ぶ姿が目に見えて分かるので、協賛の意義を感じたとお話していました。
■プロ4人が野球教室 子どもたちとストラックアウト対決
イベントでは、プロ野球選手4人による野球教室とストラックアウト対決を開催しました。野球教室は子どもたちを4つのグループに分け、角中選手には素振り、島内選手にはティー打撃、岩下選手には投球、北村選手には守備の指導を担当してもらいました。
プロ野球選手にとって年末年始はオフの貴重な時期ですし、普段は子どもたちに教える場が少ないので、時間を長くし過ぎると負担をかけてしまうと想像していました。しかし、どの選手も時間が足りないくらいの熱量で子どもたちと接していました。寡黙で職人気質のイメージを持っていた角中選手が時間を過ぎても、1人1人にスイングのアドバイスをしていたのは印象的でした。
島内選手はお手本を示しながら打球を遠くに飛ばすコツを伝え、北村選手はお兄ちゃんのような親しみやすい距離感でエラーを減らすゴロ捕球のポイントを解説していました。岩下投手は子どもたちが憧れる速い球を投げるための体の使い方を丁寧に説明していました。それぞれが特徴や強みを生かした指導をしていて、子どもたちも興味津々でしたね。どの選手からも、野球を通じて能登の復興を後押ししたい気持ちが伝わってきました。
ストラックアウトも盛り上がりました。子どもたちがプロ野球選手を指名して対戦する形にできたら良いなと思い、ダメ元で選手たちにお願いしたところ、二つ返事で引き受けてくれました。オフの期間はボールを投げないプロや、軟式ボールを投げることに抵抗があるプロは少なくありません。その中で、全選手が子どもたちと対決してくれました。本当に頭が下がります。
■参加者から感謝の言葉 継続的にイベント開催へ
イベント後は、感謝の言葉がたくさん届きました。子どもたちは「憧れの選手を近くで見て体の大きさに驚きました。あんな選手になれるように頑張ります」と目を輝かせ、保護者も「子どもたちにとって刺激的な時間でした。貴重な機会をありがとうございました」などと喜んでいました。
能登半島地震から1年が経ちましたが、まだ復興が進んでいない地域もあります。私の身近でも被災した人がいます。日常を取り戻すには時間がかかりますし、多くの人たちの力が必要です。
私たちだけではなく、今回のイベントに携わった関係者の方々からも「一度で終わるのではなく、継続していくことに意味があるのではないか」という声が出ました。改良を重ねて、今回以上に満足していただけるイベントを続けていきたいと考えています。プロ野球選手にも協力してもらう大規模な企画だけではなく、私個人や私たちの会社として貢献できることも継続していくつもりです。