■東都秋季リーグ終了 亜細亜大学は5位
東都大学野球は今年度の秋季リーグを終了しました。青山学院大学が6季連続優勝を果たし、私の母校・亜細亜大学は6チーム中5位で終えました。亜細亜大学も2011年秋から2014年春にかけて6季連続で優勝した時期もありましたが、2022年春を最後に優勝から遠ざかっています。
私は大学を卒業して8年が経ちました。亜細亜大学の野球部出身と話すと、大学野球の経験者からは「あの亜細亜ですか?大変でしたよね」、「逃げ出さずに4年間続けたんですか?」などと驚かれます。亜細亜大学は「日本一厳しい野球部」と知れ渡っているためです。
大変と言われる理由には、練習量が挙げられます。しかし、それ以上に過酷なのは緊張感やプレッシャーです。ウォーミングアップから全く気を抜けません。例えば、指示を出す人の拳が開いた瞬間にスタートを切ったり、体を回転させてから走り出したりするメニュー「反応ダッシュ」では、1人でも動きを間違えば、全員でやり直しとなります。「ウォーミングアップ=体を温める・ほぐす」という考え方を覆されました。

亜細亜大学時代の水本
■伝統の「2カ所バッティング」 試合を上回る緊張感
伝統となっている「2カ所バッティング」は、試合以上の緊張感があります。内容自体は打撃投手の投球を2カ所で打つメニューなので、他の大学も取り入れています。ただ、亜細亜大学では、全てのポジションに守備がつき、一塁から三塁まで走者もいます。そして、打撃投手が1球投げるごとに全員が反応します。カバーリングの動きも全力ですし、安打が飛んだ時は中継プレーまで完結させます。
2カ所バッティングで守備をするのはベンチ外の選手、打者と走者はベンチ入りメンバーが務めます。次戦の相手投手を想定し、開始前のミーティングで「アウトコースの変化球には手を出さない」、「フライは打たない」といったルールを決めます。そのルールに反したバッティングをした際は、守備陣から容赦ない怒号が飛んできます。監督が様子を見ているため、打撃内容によって打者は交代を命じられたり、緊張感を欠いた動きがあれば連帯責任で全員が罰走したりすることもあります。
守備は各ポジションに3人前後の選手がいます。順番で守備につきますが、出番ではない選手もずっと中腰で待機します。中腰以外の姿勢は許されません。腰が浮いている選手を監督が見つけると、全員で罰走となりました。試合前のシートノックで亜細亜大学の選手たちが中腰で両手を前に出し、大きな声を出している場面を見たことがある人もいると思います。中腰は基本姿勢です。
■走るメニューで精神力強化 髪型は自由でも…
練習メニューに、走る内容が多いところも特徴の1つです。ウォーミングアップで何キロも走りますし、インターバル走もあります。練習メニューや攻守の切り替えなども全力疾走です。夏に北海道・釧路で実施するキャンプでは、宿舎からグラウンドまで片道6キロの距離を行きも帰りもランニングしました。監督も走るため、当然ながら手を抜けません。
走るメニューが多かったのは、精神面を鍛える目的だったと感じています。おそらく、監督は走っても野球が上手くならないと考えていたはずです。きつい練習を継続することで、あと一歩頑張り抜く強さや苦しい状況でも弱気にならない精神力を養いたかったのだと思います。
「日本一厳しい」という他に、亜細亜大学野球部には「五厘刈り」のイメージも強いようです。髪形についても、よく質問されます。野球部に髪型のルールはありませんでした。ただ、髪が長いと「色気づいている」と判断され、何らかの理由をつけられて髪を切ってくるように言われます。五厘刈りの選手は試合の大事な場面でバントを失敗したり、ストライクを見逃したりして反省を示すケースが多いです。監督やコーチから「プレーに覇気がない」と指摘され、髪を剃ってくる選手もいます。
亜細亜大学出身のプロ野球選手の中には、「何億円もらっても、大学時代には戻りたくない」と話す方もいます。私たちの頃よりも厳しい時代があったのかもしれませんし、今は私たちの時代と変わっているかもしれませんが、私は大学の練習以上にプレッシャーがかかる場面は今まで経験したことがありません。