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野球と起業がつないだ縁 人前で語る“失敗談の価値”

■5月に名古屋市で卓話 「野球から得た財産」を披露

先日、名古屋市で卓話の機会をいただきました。5月で起業して丸2年が経ちましたが、最近は講演や卓話など、人前で話す依頼が増えました。今回の卓話は参加者に経営者が多く、依頼を受けた際は「まだ経営者の経験が浅い自分で大丈夫なのだろうか?」と少し不安がありました。

しかし、実際に卓話を終えると、わざわざ多くの参加者から「すごく良い内容だった」、「講演を仕事にできるんじゃない」などと声をかけていただきました。自分の経験や考え方が、年齢や職種の異なる方々にも参考になったのであれば、すごくうれしいですね。

今回の卓話では「野球から得た財産」がテーマでした。参加者の興味を最も惹きつけられたのは、大阪桐蔭高校時代の話だったと思います。「春夏連続で甲子園優勝」という結果は、間違いなく私の人生で大きなターニングポイントになりました。選手だった頃はもちろん、野球を引退してからも「甲子園春夏連覇」と「大阪桐蔭元主将」の肩書きは、私の強みです。初対面の人たちと会話のきっかけになり、顔と名前を覚えてもらいやすいです。人脈を広げる上で、強力な武器になっています。

ただ、大阪桐蔭時代を振り返ると、一番の思い出は甲子園優勝ではありません。よみがえるのは、きつかった練習ばかり。痛みや疲労で動かない体に鞭を打って泣きながらトレーニングしたり、暑さ対策として真夏に厚着をしてマスクをつけてフラフラになる中でボールを追ったりした記憶を真っ先に思い出します。実は春夏連覇を成し遂げた直後も、達成感や喜び以上に沸き上がった感情がありました。

「ようやく、高校野球が終わった。きつい練習から解放される」

名古屋市で卓話の機会をいただきました

 

■成功の裏にある苦労や失敗 ビジネスや人生にも共通点

甲子園優勝を目標に掲げるのは簡単です。でも、高い目標を達成するには文字通り「血のにじむような努力」が求められます。それを高校生で経験できたのは、その後の人生に役立っています。成功を収めるには必ず理由があり、成功の裏には周りの人からは見えない苦労や失敗があると知っているからこそ、起業してからも課題に対して前向きに取り組めています。

野球を通じた苦労話や失敗談は、ここで書ききれないほどあります。人前で披露する機会が訪れるとは想像していませんでしたが、他の競技やビジネスにも共通する部分があるので、講演で好まれているのだと思います。

卓話や講演は話す時間が長いので、“箸休め”になる話題も入れています。反応が良いのは、やはり大谷翔平選手の話。春のセンバツでの対戦や高校日本代表でチームメートだった時のエピソードは、参加者の興味が一段階上がっているのが分かります。

 

■講演は新たな出会いの場 輪が広がるワクワク感

初めて講演を打診された時は引き受けるか迷いましたが、何度か回数を重ねる中で「挑戦して良かった」と感じるようになりました。その理由は、いくつかあります。一番の理由は、新たな出会いの場になるところです。

経歴や考え方、今後の目標など自分自身について1時間も人前で話し続ける機会は日常生活でほとんどありません。「私がどんな人間なのか」を知ってもらった上で関心を持ってくれた方々と講演後にお話すると、親近感を持って接してもらえます。野球談議や共通の知人、同じような苦労話や失敗談で盛り上がります。

また、講演の中で触れた弊社の事業に興味を持ち、「野球経験者に特化した人材紹介について、改めて詳しくお話を聞かせてください」という連絡も受けました。野球をしていた頃にも感じていましたが、交流が広がっていくのはワクワクします。

卓話では野球を通じて得た学びや出会いについてお話しました

■恩師の話し方も参考に 継続する重要性を実感

それから、継続する大切さも実感します。私は大阪桐蔭高校でも亜細亜大学でも野球部の主将でした。全校生徒が集まる激励会や報告会など、大勢の前で話すことに慣れていました。ところが、社会人になって人前で話す場が全くなくなりました。社内で発表する機会が訪れたのは、選手を引退して社業に専念してからです。ブランクがあったため苦手意識が芽生えていました。

起業してからは営業先の限られた人数の前でプレゼンをするくらいでした。そのため、最初に講演の依頼を受けた時は自信がありませんでした。ただ、講演を重ねるうちに、参加者の表情や反応を見ながら話すペースや内容を調整するなど、感覚が戻ってきました。今は苦手意識もなく、迷わずに依頼を受けています。やはり、継続や慣れが何事にも大切だと感じています。

振り返ると、大阪桐蔭の西谷浩一監督や亜細亜の生田勉監督は人前で話すのが上手かったですね。西谷監督は「謙虚」、生田監督は「強気」とタイプは異なりましたが、報告会や納会などで聞いている人たちを惹きつける話し方をしていました。自然と周りが応援したくなる、周りを味方にしていく印象を受けました。

私は学生時代に偉人の自伝を読むのが好きでした。失敗を乗り越えたり、崖っぷちから這い上がったりするストーリーを読むと活力が湧いてきます。私も失敗を恐れずに挑戦を続け、講演では参加者の方々の心を動かすお話ができるように努めていきたいです。