■選手の成長が変わる 助言や指摘のタイミング
小・中学生を中心に野球指導を始めてから、早いもので3年が経ちました。名古屋市にある野球塾だけではなく、全国各地から依頼をいただく野球教室でも子どもたちに指導する機会が増えています。現在、私の地元・石川県で新たな野球塾開校に向けて準備中です。
指導歴を重ね、選手に伝えるアドバイスや提案するドリルの引き出しが増えています。直面している課題が同じでも、選手の体格、野球歴、性格などによって、選ぶ言葉やドリルは変わります。最近は野球塾が増えている中、私たちの野球塾が定員いっぱいになるほど多くの方に選んでいただけているのは、個々の選手に合ったドリルの提案、そして提案したドリルが必要な理由を説明しているところにあると思っています。
私は野球指導をスタートした当初から、選手の打撃を向上させる自信がありました。スイングを見れば、どこに課題があり、どんなドリルをすれば改善するのか、成功までの道筋が見えたからです。ただ、野球指導は、そんなに簡単ではないと痛感しました。
指導を始めたばかりの頃、私は気付いた課題や弱点をすぐに選手へ伝えていました。即座に受け入れて修正しようとする選手もいますが、弱点と認識していない選手は納得しません。同じ指摘であっても、タイミングを誤ると、選手は聞く耳を持ってくれないんです。すぐに答えを与えることが、指導の正解とは限らないと知りました。
スイングを見て個々の選手に最適な指導法を選択
■課題修正する豊富なドリル 指導の幅も強み
例えば、ゴロが増える打ち方をしている選手がいるとします。その打ち方が憧れの選手を真似したものだったり、試合ではゴロが野手の間を抜けて安打が出ていたりしたら、すぐには修正しません。選手には「試合で内野ゴロのアウトが増える時期が来るかもしれないから、その時は相談して」などと声をかけます。
まずは、選手が望む打撃フォームで打たせて、気分良く野球に取り組んでいる時は、あえて何も言わずに見守ります。気分や調子が良い時に指摘すると、不信感を招く可能性があります。選手がアドバイスを求めているタイミングで的確な言葉をかけることで、素直に話を聞いてもらえますし、そのアドバイスで課題が解決すると信頼関係が深まります。
選手への声のかけ方の他にも、「指導の幅」は私が指導者として成長した部分です。例えば、打撃で体が開くクセのある選手に対して、指導開始当初は主に3つのドリルを提案していました。今は5種類に増えています。
また、クセを直す時に体の部位の動かし方を修正するだけではなく、打球方向といった体以外のところに意識を向けさせるなど、指導の幅が広がりました。具体的には、「左側のネットに当てないように打って」、「上のネットを狙って」と条件を付けて、ティー打撃をします。どこに打球を飛ばすのか意識させることで、自然とクセを修正する体の使い方が身に付きます。
ティーの上げ方も、私たちの野球塾ではバリエーションが豊富です。真正面、斜め、真横といった角度、速さやコースも指導する選手によって変えています。個々の選手の特徴を正確に把握し、豊富な選択肢から最適な方法を提案できるのが私の強みです。さらに、選手のどこを見て、どのドリルを選ぶのか重要なポイントをスタッフ全員で共有しているため、野球塾全体で質の高い指導ができるところも自信を持っています。