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変化する高校野球 活躍できる選手が増える可能性に期待

■投手層の厚さや分業制が加速 甲子園で勝ち上がるカギ

3月から野球専門サイト「Full-Count」さまや「First-Pitch」さまでコラム寄稿の機会をいただいていることもあり、最近は「コラム読んでいます」と声をかけられる頻度が高くなっています。ご覧いただき、ありがとうございます。今回のコラムでは、私たちの時代とは大きく変化している高校野球についてつづります。

横浜高校の優勝で幕を下ろした今春の選抜高校野球大会では、第3、第4投手の重要性が高まっていると感じました。今から10数年前になりますが、私が大阪桐蔭高校でプレーしていた頃は大黒柱となるエースが全ての試合に先発するのが一般的でした。多くても二本柱と呼ばれる2人の投手がいて、交互に先発する形でした。当時の大阪桐蔭であれば、藤浪晋太郎投手(現:マリナーズ傘下3Aタコマ)と澤田圭佑投手(現:ロッテ)の2人以外は甲子園で登板していません。

ところが、近年は3人の投手で1試合を継投したり、エースナンバーの投手が守護神のような形で終盤から登場したりするチームが増えている印象です。今春のセンバツでも、横浜は背番号10の織田翔希投手が先発し、背番号1の奥村頼人投手につなぐ継投を必勝パターンとしていました。さらに、試合展開や相手打者を見て、2ケタの背番号をつけた投手がワンポイントや短いイニングで起用されていました。

 

■数多くの選手が活躍する可能性 特徴生かしたチームづくり

連覇を狙って準決勝で敗れた健大高崎も、エース石垣元気投手が大会直前に脇腹を痛めた影響があったとは言え、本格派右腕の下重賢慎投手と技巧派左腕の山田遼太投手が相手チームに合わせて先発を任されていました。準々決勝の花巻東戦で好投した山田投手は変化球が多彩でタイミングやバットの芯を外すのが上手く、フルスイングする花巻東と相性が良いと感じました。

私は中学生まで投手をしていました。全国大会で完全試合をした投球が大阪桐蔭・西谷浩一監督の目に留まるきっかけでした。藤浪投手と澤田投手には遠く及ばなかったので、高校入学後は外野手専任になりましたが、今の時代であれば投手の練習をして、マウンドに立つ機会があったのではないかと思っています。ともに右投手だった藤浪投手や澤田投手の剛速球にタイミングを合わせていた打者が、私のように球速で勝負するタイプではない左投手の球に対応するのは大変です。ワンポイントで戦力になれたのではないかと想像しています。

高校野球は球数制限が設けられたこともあって、投手の分業制が進んでいます。エースが全試合で先発、完投するかつての戦い方は現実的ではありません。私は個人的に分業制に賛成です。数多くの投手が輝くチャンスが広がりますし、自分の役割も見えやすくなります。たとえスピードがなくても、コントロール抜群の投手、特定の変化球を武器にする投手、けん制やクイックに長けた投手など、個々の特徴を生かしたチームづくりができます。打者目線では、複数投手と対戦は対応する難しさを感じます。

これは野手も同じです。足が速い、小技が上手い、球際に強い、肩が強いといった個性を磨いて活躍する選手が増えてほしいですね。野球に限らず他の競技、さらには企業でも同じタイプばかり集まるよりも、様々な特徴を持った人が長所を発揮できるチームや組織の方が戦い方は増えますし、魅力的です。

今春のセンバツは横浜が智弁和歌山を下して優勝

■フィジカル強化orスモールベースボール 低反発バットで二極化

もう1つ、私たちの時代と高校野球が大きく変化しているところは「低反発バットの導入」です。私も実際に低反発バットを使った経験があります。感覚的に、バットの芯で捉えた打球は今までの金属バットとほとんど違いはありません。ただ、詰まった時は打球の初速が遅く、飛距離も出ません。投球を弾き返すのではなく、バットで吸収するような感触があります。

低反発バットによって打球が全体的に飛ばなくなり、多くのチームが外野のポジションをかなり浅くしています。安打1本で二塁走者が還ってくるのが難しくなりました。

バットが代われば野球も変化します。打球が飛ばなくなったことで、打撃方針の二極化が加速している印象を受けています。低反発でも飛距離を出せるようにフィジカルを徹底的に強化するのか、機動力や小技を生かすのか、チーム方針が今まで以上にはっきりしてきたと感じます。どちらが正解というわけではなく、選手の体格や特徴に合わせたチームづくりが勝利に近づくと思っています。